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そいつは、無言で俺を引きずり続ける。
「おい!離せよっ!…ちょっと!!俺まだ荷物が……んっっ……!!」
部屋に放り込まれ、扉が閉められた瞬間俺はそいつに唇を塞がれ、思いっきり抱き締められた。
「会いたかった…!陸、会いたかった…陸…陸……!!」
「……お、前…年々大胆になってってねえか……」
「…そりゃあ、健全な17歳ですからっ☆」
「…」
「ま、冗談は置いといて。…陸、会いたかった……ずっとこの日を待ってた」
そう言うと、今度は優しく俺を抱き締める。…その手が気持ち良くて、つい身を委ねてしまう。
「…遥斗、見せたいものって何だよ」
「え?ないよ」
「はあ?」
「ないよ、んなもん。早くお前を連れ込むための口実だよ。グダグダしてっとじいちゃん辺りに捕まんだろ」
「お、お前ってやつは……!!」
「……あ。やっぱあるかも、見せたいもの」
「…なんだよ」
「んー、俺のカ、ラ、ダ?」
「朝から変なこと言うんじゃねええええ!!!」
俺はとっさにそいつを突き飛ばした。床に突っ伏す遥斗の図。
「陸ー!遥くんー!朝ごはんよー!」
その時、階段下から無駄にでかい母さんの声が聞こえた。
「遥斗、ほら、行くぞ」
「…おう」
部屋の扉を開け、俺達は『いとこ』になって階段を駆け降りた。
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