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バスの中から
バスの中から見える空と海は、
目が覚めるほど
青く、美しくいつの間にか、
一粒、二粒、涙が頬を伝ってきた。
加奈子は慌ててカバンの中から
ハンカチを取りだして目頭を押さえたが、
どうしようもなく涙は溢れ流れ
ハンカチを濡らし続けた。
昼過ぎのバスは乗客が少なく
終始携帯電話をいじっている若いサラリーマンや
ぼんやりと外の眺めを見つめている
年老いた夫婦が一組、
疲れているのか、うつむいて寝ている人が
四、五人いるだけで
一番後ろの座席て嗚咽している加奈子に
気づく者は一人もいなかった。
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