13850人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
優さんも部屋を出て行き、入院手続きの書類を書いていた
美央子が、呼ばれて傍に立つ。
手を伸ばし、まだほっそりとしている腰を攫い、
膝に座らせた。
こうしてまた、美央子を抱きしめることができて
良かった。あいつは全てを失ったが、俺にはこの世で
一番愛しい女と、これから産まれてくる我が子という
貴重な存在が残っている。
これが勝利と言わずに何と言う?
けれど、真の勝者は美央子かもしれない。
何しろ彼女の何気ない行動が、俺を死神から
守ってくれたのだから。
「なんでニヤニヤ笑ってるの?」
腕の中の美央子が微笑みながら、首を傾げる。
「幸せだからだよ」
そう、これ以上の幸せなんて無い。
美央子の平らなお腹に手を当て、話しかける。
「おい、パパを怖がったりするんじゃないぞ」
「ふふ。なるほど、今から言い聞かせる作戦ね」
そう言って、朗らかに笑う美央子。
その最愛の妻を引き寄せ、しっかりと抱きしめる。
彼女が腕の中にいる幸せを、かみしめる。
そう、俺はどんな勝負にも、負けるわけなど無い。
どんなことがあっても、変わらぬ愛で包み込んでくれる。
女神が傍にいるのだから。
END
最初のコメントを投稿しよう!