誰も知らない「彼の最期」

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 鮮やかな風景。煌めく景色。  しかし、光に手を伸ばせば、その手は立ち所に溶けていった。  彼が望んだ場所は、悉く彼を拒絶した。  熱線に体が爛れていく。  苦しい。辛い。  そうして、彼は気付く。明るく綺麗だったのは世界ではなく、そこに在る者たちだったのだと。  自分はそれらとは一線を画す、暗い世界の物だったのだと。  熱っぽい世界に焦がされ、彼は独り、消えていく。  寂しい。悲しい。  そんな気持ちとは裏腹に、世界は鮮烈に輝いた。まるで彼の退場を喜んでいるかのように。
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