私が知る限りの「彼の話」

4/5
前へ
/7ページ
次へ
 ある朝、曙光が見えた。  それは鈍色の暗雲を押しのけ、空を透き通るような青に塗り替える。  麗らかな日差しに誘われ、深雪の底から、草花が顔を出す。  春が訪れたのだ。  空は青く、どこまでも広がった。大地は彩り豊かに輝いた。  彼の憧憬は、今、美しい実像を結んだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加