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松明の灯火を飲み込み、揺らめく紅蓮が燃え広がる。
禍々しい姿の銅像。歪んだ配色の絵画。刺々しい玉座。
腕を広げる炎が、それら全てを飲み込み灰燼へと変えていく。魔王自ら放った闇の炎、それが彼の居城を紅く染め上げていた。
「ふ、ふふ、ふっふふふ……よくぞ、よくぞこの私を打ち負かした。強くなったものだな、勇者よ」
「……俺だけの力じゃない。助けてくれる仲間が、いたからだ」
炎の中、二人の男が対峙する。
片方は眩い白銀の鎧に身を包んだ青年。そしてもう一方は、血を吹く腹を押さえ蹲る男――魔王だった。
長きに渡り、魔王によって苦しめられ続けた世界。その怒りが化身したかのように、彗星の如く現れた青年がいた。
どこから来たのかも定かでない彼は、強いリーダーシップと、魔王にも負けない魔法の数々を駆使して、次々と魔王に脅かされた地を解放していった。民衆の先頭に立ち、しかし共に歩む彼を、人々は『勇者』と呼んだ。
幾多の戦いを経て成長した青年はいま、まさに宿敵たる悪の権化・魔王に立ち向かい、刃を届かせたのであった。
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