第1章・松本拓也視点

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美和の手をとり車の側まで連れていき制服の乱れをなおしてやる。 ブラウス、リボン、上着。そして色ゴムをとってブラッシングしポニーテールにしてやると… ほらっ、やっぱりかわいいっ。 車は公園前を出て下り坂をゆっくり進む中で、美和は『おろして』と言う。 こわばった顔、気持ちはわからなくもないけど。 今逃げても同じだと思うけど? まだ顔をあわせた事がないけど、あの女が…って呼ばせてもらうわ。 あの女達がマクドにいる限り美和はマクドには行かないつもり? 可哀想じゃないっ。 あたしは悔しさを勉強で見返してやりたいと頑張ったけど、美和は悔しさをバネに変える何かはあるの? 悔しさという気持ちは分かるから助けてあげたいのよっ! 逃げないで、美和ちゃん。 秘策はあるのよ。 絶対に美和が有利にたつやり方で、助けてあげるの。 『あの女のレジでこのとうりに言ってね』 美和の好きなセットを聞いた上で、追加分としてメモを渡すと美和は不安そうに眺めていたっけ。 『便利屋』 便利屋ーー美和ちゃんは何故かその単語に反応した。何かある!?店内から美和を見ながら便利屋という最低な呼び方をし中傷するS高制服を着た生徒達。 美和は便利屋というあだ名で呼ばれているの? 目を閉じてうつ向き我慢している美和を見て、 手首をとりギュッと握る。 泣きそうな顔で振り向いて、だけど泣くまいとする表情に闘争心がわいた。 便利屋なんて… 呼ばれたくないに決まってる! あたしは美和ちゃんの代わりに言ってやったわ。 『吉井美和っていう名前があるのに』 『なんだよババア』ってあたしに向かってあいつら反省するような素振りすら見せない。 ババア? あたしの見た目からの感想なんでしょうけど、ババアですってっ。 肩までの茶髪をバレッタで留めて両サイドのひと房はそのままのヘアスタイルのせいかしら。 今までも女に間違われる事が多いけど。 ババアですって? あたしまだまだ28歳なんだから、ババア単語にムカついちゃう。 店内の壁際に8人並んだのが視界に入りうなずいた。『揃ってる?店内に入ってスタンバイしてて』 先ほど美和の後ろに並びアシスタントにメールを打っていたから。 サングラスをしニヤリと笑うあたし、紛れもなく《かかって来なさい!》的な闘争モード。 並んでから30分…もたつく1台のレジもやっと美和ちゃんの順番が来ようとしていた。
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