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「海と相性の悪い男ですか。若いのに身寄りがないというのも、つらいですね」
しんみりと孝太が答えてくる。
「神埼探偵の記憶は無いに等しいよ。海に夜子ちゃんを連れて行かないのは、そういうことからだと思う」
碇も不安定な心境を隠せない。
碇の身内も居たのだ。
気の良い叔父で、たくさんの恩恵を受けていた。
それが、一瞬で波に浚われたと言われていれるれどそれも運命だったのだと思う。
碇自身もいつ何時、命を落とすことになる可能性が高いのだ。
刑事をしているのだから真っ当な人生を歩むことが難しい。
殉職した警官の話を聞く度に、碇にも複雑な感情が芽生えてくる。
なまじ、想像力が働いてしまうからだろう。妙に圧倒的な威圧感に押し潰されそうになることがしばしばある。まだ、トラウマが無いことが救いだ。いや、いずれ、心に付けられる傷に怯えていた。その日がいつ来るのかは碇にもわからない。神様ですら予期できない。人の人生を知ることは難しい。そう言いながら文字を描いている自分は途方もない詐欺師だと認めるしかなかっ。
「夜子さんとは面識はありませんが、随分と可愛らしい子だと聞きましたよ。神埼探偵には勿体ないと川倉警部が言っていました」
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