六章

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 3 碇は、警視庁に戻ってから調査書を纏めていた。  ワードエクセルは本当に疲れる。長い間画面を見続けているせいか、目に負担がかかっていた。一応、ブルーライトカットの眼鏡を購入したのだが、身体が固まっているのか肩から背中から痛みが走っている。眼科を受診するべきだろうか。気だるさが抜けない。数時間に数分の休憩では足りないようであった。 「碇先輩、長い報告書ですね」  孝太が、菓子を袋から出して机に載せた。  コンビニのクッキーとチョコレートだ。 「はい。ホット珈琲です」  続けて、缶珈琲が置かれる。 「ショコラテか。珍しいな」 「最近の新作だということです。いつものコンビニのお姉さんが教えてくれたんですよ」  孝太が椅子に腰掛けて画面を覗く。 「新作、ね」  碇は、缶を振る。液体の音がした。ショコラテは甘い。疲れた身体には丁度良い。碇は迷わずプルタブを開けた。甘い匂いが漂う。チョコレートの良い香りだ。安心感がある。甘さも程好い。 「しかし、嫌な事件でしたね」  孝太も缶珈琲を飲んだ。ブラック珈琲の新作だ。 「ああ、嫌な事件だよ」  碇も自分の書いた報告書に毒づいた。  始めから流れを辿ると、胸が苦しくなる。 「人生なんなんっすかね。こんな生き方を選ぶやつらの気が知れないっす」  孝太が首を振る。
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