六章

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「まんま、神埼探偵の受け売りだけれどな」 「神埼探偵は不思議な人ですからね。なんで探偵をしてるんですかね?」  孝太が珈琲を飲み干した。 「夜子ちゃん情報によると、居なくなった恋人を探しているそうだ。ほら、何年か前に刑事法を含めた全ての法律が改訂されただろ。あのとき会議に参加していた恋人が沈没事故で海に投げ出されたんだそうだ」 「うへえ。それって、代議士の娘さんでしたっけ」  孝太が思い切り顔を歪めた。 「知っているのか?」 「ええ、それなりに新聞やら雑誌を読みますし、会議場となっていた船が沈没した話は有名じゃないですか。某沈没船も真っ青の結末だと書いてありましたよ。確か、会議が終わる直後でしたか、引き換えそうとした船が横波で横転。会議場に居た議会員とその家族、従業員が海に投げ出されたとか。そのとき、行方不明が何人か居て、代議士の娘さんも混ざっていた記憶があります。あとは全部男だったという話も聞いています」 「そうだよ。ふざけているよな。神埼探偵はその時記憶を無くしているんだ。自分の恋人を探していることと両親を失ったことしか覚えていない。名前も所持品にあったからその名前になっただけで本名であって本名ではない。俺はその話を知ったときに神埼探偵は海と相性か悪いのだと思った」
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