六章

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 意地悪く孝太が言った。 「告白しないんですか?」  孝太が軽くけしかけて来る。 「まだいいよ。何回か誘ってみたけど脈がないから」  怒りは冷めた答えを口にした。夜子については後回しでいい。夜子は神埼にぞっこんなのだ。碇には興味も示さない。 「碇先輩、結構、積極的だったんですね」 「なんだよ。そういう孝太はどうなんだ? 」 「僕には可愛らしい彼女が居ますよ。探偵やら推理にしか興味を示さない変わり者で目を離すと他の管理下で手柄を上げています。流石に爆発事故のときは看病に来てくれました。嬉しかったなあ」  孝太ののろけ話に碇はさらに複雑な心境を重ねる。 「熱い。熱い。どうして若いのはそうなんだか」 「あれ? ひがみですか?」 「馬鹿野郎。そんなんじゃないよ」  碇は、残りの菓子を摘まむ。甘いクッキーにチョコレート。甘味がないと生きてはいけないとはいえ糖分の糖分の採りすぎは体に悪いことも知っている。それでも食べずにはいられない。矛盾した思考は恋愛感情と変わらない。永久にわからないだろう。そこに道徳だの淡さだのと付け加えたところで、すっきりとしないもやもやとした気持ちが残るだけであった。
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