六章

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 孝太も自分が無口になることで機嫌を損ねたことに気がついたのだろう。喋るのを止めて片付けを開始している。 「そうだ。木元の調書はどうなった?」  気まずい空気を消そうとして碇は、訊ねた。  孝太が聴取に立ちあったのだ。 「一貫して無実を主張していますよ。麻取りも目をつけているのでそっちの罪状の方が高いんじゃないでしょうか」 「マリアについてはなにか言ってたか?」 「何も。黙秘です。川倉警部が泣いてました」 「やりづらい奴か」 「まだ、総てを語るには時間が必要ですね」 「そうだな」  碇は皮肉を呟いた。  館内放送が流れる。睦月街豊島区で変死体が発見されたとアナウンスが繰り返される。  碇と孝太の二人は跳び跳ねるように支度をし、仕事部屋を飛び出した。
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