一章

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 神埼探偵事務所の接客室には、秘書の鮫島夜子が飾っている花が溢れている。  薔薇、ハイビスカス、パンジー、鈴蘭、このどれもが造花だというから女の美的センスが神埼には難しい。花は枯れてしまうからいいのだ。永久普遍など世界にはあってはならない。  その他、ドライフラワーも飾られているが、そういう問題でもなかった。事務所は花屋に近い。面積の半分が夜子の趣味で占領されている。神埼の居場所は狭まるばかりだ。住人は花ですかと依頼人の皮肉が絶えない。  溢れんばかりの花たちは、インターネットで取り寄せたそうだがどうも美しさを形容することが神埼にはできなかった。  夜子は容姿端麗、胸も豊満だ。接客に関して申し分ない働きをするのだが、言動や素行が雑なところがある。  黙っていれば聖女と呼ばれる。年上にも年下にもそれなりに人気のある女性だ。  神埼にはそれが最大の問題だった。自分にはどうも勿体ないお嬢様なのだ。  夜子は鮫島家の令嬢だ。鮫島家といえば日本でも有名な大富豪だ。所謂、セレブといえる。探偵業の秘書など職業にしては人生の無駄にしているように思えてならない。

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