甘い水と白い夢

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すると、蒼一郎さんの手が俺の顎を捉え、上にあげた。 「顔、隠しちゃダメ。」 蒼一郎さんが悪戯っ子のように笑うので、さらに顔に熱が溜まる。 な、なんかいつもより意地悪になってません!? 普段の優しくて可愛い蒼一郎さんは一体どこにいったんすか………!? 「あ、あのっ、俺さっき、く、薬飲んでっ……!! 今、変なんですっ!!!!」 顔を見られたくない一心で暴れ、蒼一郎さんの抱擁から脱出を試みた。 「んー?? 何が変なの??」 柔らかい物腰とは真逆の、びくともしない腕は俺を捉えて離さない。 蒼一郎さんの顔はどんどん近づいてきて輪郭があやふやになったと思った瞬間。 「んんっ!?」 それがキスだと理解する頃には、もう蒼一郎さんの舌は俺の口内に侵入していた。 「ふぁっ……ん……っ……。」 必死に逃げたけれど、蒼一郎さんの舌は容赦なく俺の舌に絡み、吸い上げられた。 強く吸われたと思ったら、今度は優しく撫でられる。 ちゅくちゅくと水音が部屋には響く。 「んっ……ふ……はぁ……。」 どちらの物かもうわからない唾液が口内にたまる。 溢れかえった唾液がつっと口の端から落ちていく。 たまらず、俺はコクンとそれを飲んだ。 いつもと違う蒼一郎さんのギラギラする目も。 熱い息遣いも。 卑猥に響く水音も。 全てが、俺を煽った。 根元や舌先を思う存分に弄られ、蒼一郎さんが満足して離れた頃には俺の舌はジンジンと痺れていた。 はぁはぁと酸素を必死に求める俺と違い、蒼一郎さんは乱れ息一つしていない。 背中に回っていた蒼一郎さんの手がTシャツの裾をめくりあげ、スルッと脇腹を優しくなでた。 ずっと熱が燻っていた俺にとって、それだけでも充分な快感だった。 「やっ、ちょ……蒼一郎さんっ……。」 痺れて回らない舌で、必死に言葉を紡ぐ。 今まで体験したことのないような感覚に目がチカチカする。 身体の熱は冷めるどころか、どんどん上がっていく。 これ以上は熱で頭が溶けてしまう。 そう命の危機を感じ、蒼一郎さんの服を握り締めて停止を訴えた。
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