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キッパリ丁寧にお断りした。
ふと、横を盗み見ると、狐狗狸は優しい顔をしていた。
……あ、この顔は。
こんな顔をしているってことは、きっとその知り合いの店に浩史さんもいたんだろうな。
狐狗狸は普段、ニコニコと天使みたいに愛想を振りまいているが、本性はとんだ悪魔だ。 サタンだ。 いやもうまじで。
だがそんな狐狗狸でも、一人だけ、その人の話をするとびっくりするくらい優しい顔をする。
その人は姫野 浩史(ヒメノ コウジ)という、俺らより5歳年上の社会人だ。
どうやって出会ったのか詳しくは知らないが、けっこう昔からの仲らしい。
そして狐狗狸は決まって、浩史さんの話をするときはこんな優しい目をする。
しかし狐狗狸は実は不器用だ。
そりゃもう、超ド級の不器用だ。
素直になれず、狂気じみた言動を浩史さんにとってしまうのだ。
…………例えば逃げる浩史さんを追いかけるために、俺から借りた(ふんだくった)原付バイクでビルの3階からダイブする、とか。
………チェーンソーで浩史さんが勤める会社の建物を半壊させた、とか。
………………………恐ろしくて細部までは聞かなかったけど。
もっと素直になりゃいいのに。
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