少女は出会う

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「あっ、いえ大丈夫です…」 立ち上がって制服についた埃を掃う。 「(うわ…綺麗な黒髪してる)」 男は落とした竹刀を拾い上げ、上半身を30度程曲げる。 「では、失礼」 顔を上げ、にこりとした後、その場を去っていった。 「…礼儀正しい人だったなぁ」 男の後ろ姿を見送った後、絹は校舎を後にした。 絹が校舎をでる頃、空は朱色に色付いていた。 学校から家が近いので、絹は近くにあった丘に寄り道することにした。 「ふあーっ!」 リュックサックを投げ捨て、草原にダイブする。 サラサラした草が、頬を擽る。いつも学校帰りにここに通っている。そして唯一の楽しみだ。 サァッと風が草を吹き抜ける音、烏の鳴き声。 「好きだなぁ、全部…」 そしてここで一日を振り返る。これが習慣となっていた。
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