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「柚樹悪ぃ、遅れて!!ちょっと道混んでた!!」
息を切らせて走ってくるアイツは、悔しいけど今日もかっこよかった。
「おっせーよ!待ちくたびれたんだけど。どんだけ待たせんだよ!?」
早鐘を打つ心臓…気づかれないように抑え、いつも通り悪態をつく。
「んな顔すんなよ?夕飯奢ってやるから。」
「う…」
笑顔を見せられると何も言えなくなってしまう。
赤面しているだろう顔は思わず俯く。
ポンポンと頭を撫でられると、その場を離れる。
反射的に顔を上げると、アイツはヘルメットを被り、バット片手に打席へと向かっていた。
マウンドと打席。18メートルちょっとの距離がもどかしい。
バットをくるりと回して、構えるその見慣れた姿にさえもドキドキする。
(呆けてんなぁ…)
らしくない自分に苦笑しつつ、頭を振ってボールを握り直した。
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