名前を呼ぼう

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「くっそ、てめぇ!!何なんだよ!?さっきから、全部打ち返しやがって!!」 「バーカ!!俺を打ち取ろうなんて10年早ぇわ!!」 覚えたての変化球を軽々とスタンドインさせられる。 こんなにポンポンと打たれると、自信が無くなってくる。 何度か詰まらせたり、ファールにしたりするものの、そう簡単に三振を取らせてくれない。 かと言って手加減しないところもまた、嬉しくもあり悔しくもあり。 「そろそろ上がるか?」 かなりの球数を投げていたのだろう、汗が滲み肩で息をする俺にアイツはストップをかけた。 「あ、うん…」 「相変わらず球走ってるし、変化球のキレも申し分ないし、これなら今年はいいとこ行けんじゃね?」 「お前が言っても説得力ねーし。」 思わず褒められるものの、照れ臭くてそう答える。 「しょうがねぇだろ?高校生と大学生じゃ違いが大きいからな。」 不敵に笑うその笑顔を見上げながら、逸る胸元のユニフォームをそっと掴んだ。
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