酔っぱらいはごめんです

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酔っぱらいはごめんです

世間一般で花金と呼ばれる金曜日 大勢の酔っぱらいが繁華街に溢れていた。 楽しそうにしている人もいれば、大声をあげて暴れている人も。 お酒とは何と恐ろしいものか そう思いながら、仕事帰りのケイは真っ直ぐ自宅への道を歩いていた。 すると、3、4人の人がわらわら電柱に集まっていた。 ちらりと覗けば、酔っぱらいの女性がブラウスもはだけた状態で倒れていた。 よく見れば、助けるふりをして、集まったらしい野次馬に脱がされ写真を撮られている。 酔っぱらいも嫌いだが、こういった輩も虫酸が走るケイは、たまらず声をあらげた。 「てめーら!何うちの姉貴にちょっかいだしてやがんだ、うらぁ!」 もともと目付きが悪く、薄明かりの中のケイは、ぱっとみ女性でもかなりの迫力がある。 「携帯、かせ。こわされてーか?」 案の定、際どい写真を撮られていた。 一人、一人携帯を確認し、消去し、ぽいっと投げ返した。 雲の巣のように散る男どもに嫌気がさしながら、今だ起きない女を揺さぶった。 「おーい!あんた!話せる?」 「う、、、」 「なに?」 「う、、、うるさい!」 ばちーん!と聞こえよいほど響き渡る音をたてながら手を払われた。 かなり酔っているらしく、目の焦点もあってない。 が、急性アルコール中毒でもなさそうだ。 ケイは着ていた上着を女性にかぶせ、叩かれた手をもう一度差し出した。 「いいか?今回だけだからな。」 よいしょと彼女を抱き上げ、タクシーを拾った。 さすが花金。タクシーは忙しそうに溢れている。 身元を確かめたかったが、どうやらバックは盗まれたようだ。何もなかった。 「まったく、何で私が。」 とにかく面倒でたまらなかったが、今日だけ、今回だけと心を静め、自分のマンションまで運んだ。
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