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あ、と。
サトルの表情が歪んだように見えたのは、一瞬。
すぐに俺の目は、その透き通るように白い肌に巻き付く、赤黒い痕に釘付けになる。
まるで、縄か何かで、手首を縛られたような、そんな内出血の痕が、サトルの手首に付いていた。
「...これ、何なんだよ」
「あ、それね。ケセランパセランの所為なんだよ」
それなのに、サトルは忽ち無邪気に笑って、意味の分からない理由を口にする。
「....は?」
「大変だったんだよー。細くて固い枝みたいので、俺の手首を締め付けるんだあ。捕まえるの、すっごく苦労した!」
ヘラヘラ、ヘラヘラ。
サトルが笑う度に、俺の苛々は募っていく。
「.....」
「大丈夫だよー。ケセランパセランとの友情の証だからね。もう、痛くないよ!」
「...もう、いい」
こんな奴、少しでも心配した俺が馬鹿だった。
どうせ、何かまた馬鹿な遊びでもして、付いた痕なんだろう。
舌打ちと共に、サトルの手首を離し、再び歩き出す俺に、サトルが駆け寄って顔を覗き込んでくる。
「あっ君...怒った?」
眉が下がって、弱々しく尋ねてくるサトルは、まるで不安を抱く幼い子供のように頼りない、と思った。
どうして、この馬鹿 はいつもこうなんだ...
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