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先月、父が死んでしまった。
ついこの間まで呆れるほど元気だったのに、病気で、あっさりと。
「お前に頼みがあるんだ」
最期の日。
沢山のチューブに繋がれた父は、苦しそうな声で僕に言った。
「父さんの結んだ絵を解いて、欲しい。彼らとの約束を」
父は絵を結ぶ仕事をしていた。
想いと景色を混ぜ合わせた絵の具で、風景を写し取り描く仕事で。
遠い昔、Shiroという惑星の風景を描いたこと。
その星が白波に飲み込まれてしまったこと。
波が抜けるのを、ずっと待っていたこと。
「結び師が嫌いな事は知っている。だが、これだけはどうしてもお前に託したいんだ。頼む」
動かせない体を震わせ話し続ける父の様子を、僕は複雑な気持ちで見ていた。
結び師が嫌いなのは、小さい頃の父との時間を奪ったからだ。
そして今度は最期の時間まで。
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