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そして、仲良く立ち去っていく二人を見つめながら、内田はへたりこんだまま盛大にため息を吐いた。
「――嵐が去った。」
埃を払い落としながら、「翔がいないと野獣だな」とぼやく。
「そんな事言うと、紗智、戻ってくるよ?」
「うげッ、マジで勘弁ッ!!」
そう言った後で、亜希と目が合う。
内田は少し息を飲むと、未だにスカートの裾を気にしている亜希に「ごめんな」と呟いた。
「服、本番前に汚しちゃったからさ。」
「……あ、うん。」
「家で洗濯しておく」と言いながら、「それと……」と言葉を濁して目を逸らす。
「――それ、似合ってる。」
「へ……?」
「服ッ!」
そう言って急に内田が声を荒げるから、亜希はちょっと面食らって目を丸くした。
「え……っと?」
内田は「何だよ?」と耳を真っ赤にして険しい顔をしている。
「――ははあん、何か、魂胆があるな?」
「は?」
「煽てられたって、そうはいかないんだから。」
そう言うと亜希は内田から目を逸らすと、顔を背けた。
「――さては、おぬし、当番をサボる気だな?」
「サボらねーよ。」
「本当に?」
「ああ。」
内田の当番は、丁度、亜希の自由時間と入れ違いだ。
「12時からだからね?」
「分かってるよ。」
「わ、分かってるよ。一緒の時間に休み時間に入れるように誰かと代わってもらうよ。」
「――野球部のショーが午前中にあるって紗智が言ってたけど?」
「――ウッ。」
亜希に指摘されて、スケジュールを思い起こすが、上手い方法が咄嗟には思い付かない。
このままだと折角のチャンスを逃してしまう。
亜希が一人で回るだなんて分かったら、同じ野球部仲間の荒木や原が放っておかないだろう。
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