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しかも、噂をすれば何とやらで、二人が小さく見える。
「――智和、見つけたあッ! おーい!」
手を振りながら、ぐんぐん近付いてくる。
(……ひとまず、あいつらを近付けちゃダメだ。)
このままここにいれば、「代わりに俺らと回ろう」と言い出すに違いない。
「――進藤、悪い! また後で!」
「へ?」
「予定は何とかするから、周りには『先約あり』って言っておけよ?」
「え、ちょっと……?」
「約束なッ!」
そう言って内田は駆け出していき、一人廊下に置いてきぼりにされる。
「……何なのよ、もう。」
亜希はぷくっと頬を膨らませてむくれた。
『内田といつも楽しそうにしてるじゃないか。』
去っていく内田の背中を見送りながら、「もし内田が彼氏だったら」と思い描く。
それと同じ廊下を歩みながら、亜希は職員室に向かっていた。
(……元気にしてるかなあ。)
紗智と翔は昨年結婚して、相変わらずラブラブだと聞いているが、内田はどうしているのか分からない。
(……確か、内田のお父さんのお葬式を最後に会ってないから。)
ひい、ふうと指を折って会っていない年月を確かめる。
(……もう丸二年も経つのかあ。)
階段は昔と変わりなく、無機質な蛍光灯の明かりに照らされている。
(……もしも、内田と付き合っていたら、今ごろどうなっていたのかなあ。)
あの頃は全てが久保だったから、結局何も浮かばなかったが、内田の告白をオーケーして紗智と翔みたいに過ごしている自分を想像してみる。
――仲良くデートをして。
――時々、喧嘩をして。
(うーん、でも、どうもしっくり来ないなあ。)
想像してみても、途中で考えが止まってしまう。
どうしても「友達」の域から出られない。
そこで今度は久保が学生だったらと想像してみる。
――今日だけで、何度見惚れたか分からない。
(別に『格好いい』とかじゃないんだけどな……。)
きっと久保が学生だったなら、吸い寄せられるようにその姿を目で追ってしまうのだろう。
途中から今日の久保が入り交じり、完全に置きかわる。
『もしかして、口説いてます?』
『もしかしなくても、そうだけど。』
そう真面目な顔をして言う久保を思い返しては、顔が熱くなる。
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