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「……醤油を運んでいた荷車と、果物を運んでいた荷車がぶつかったんだよ」
突然隣で声がした。
そちらを見ると、義靖の隣に立っていた 鳶職(とびしょく)の格好をした男が、義靖を見て笑っていた。
「え?荷車ですか?」
「そう、俺はさっき前の方まで行って様子を見てきたけど、……ひどいもんさ。スイカやらミカンが あちこちに転がって割れてるし、醤油は壺から溢れてるし」
「だから、変な匂いがしてるんですね……言い争ってるのは、その荷車を運んでいた人達ですか?」
「そうそう、どっちの奴も、凄い形相で怒ってたし、そのうち、取っ組み合いの喧嘩にでも なるんじゃねぇかなぁ!」
男は嬉しそうにそう言うと、肩を揺らして笑った。
どこにでも、こういう争い事を面白がる 野次馬好きな人間はいるものだ。
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