饅頭と鬼

3/11

450人が本棚に入れています
本棚に追加
/655ページ
郷愁に浸っていたところで、 スタスタと廊下を歩く音が土方の耳に届いた。 段々と、その足音は近づいてくる。 「トシさん!」 パンッと音をたて、勢いよく襖障子が開く。 そこには、中性的な顔立ちの、ひょろりとした長身の青年が立っていた。 「……なんだ、またお前か、義靖」 来るとわかっていたが、待っていたと思われたくない土方は、そう言った。 その青年は、 名を 蓼川義靖(たでかわよしやす) といった。 新選組三番隊の隊士である。 歳は20を超えるが、どこかあどけなさが残っており、艶のある長い黒髪を、馬の尾のように頭の高いところで束ねていた。 土方と義靖は試衛館の頃からの付き合いである。 わけあって、 その頃から義靖は土方の家に居候していた。 そのせいか、副長と隊士という役職の離れた彼らは、今でも兄弟のように仲が良い。
/655ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加