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郷愁に浸っていたところで、
スタスタと廊下を歩く音が土方の耳に届いた。
段々と、その足音は近づいてくる。
「トシさん!」
パンッと音をたて、勢いよく襖障子が開く。
そこには、中性的な顔立ちの、ひょろりとした長身の青年が立っていた。
「……なんだ、またお前か、義靖」
来るとわかっていたが、待っていたと思われたくない土方は、そう言った。
その青年は、
名を 蓼川義靖(たでかわよしやす)
といった。
新選組三番隊の隊士である。
歳は20を超えるが、どこかあどけなさが残っており、艶のある長い黒髪を、馬の尾のように頭の高いところで束ねていた。
土方と義靖は試衛館の頃からの付き合いである。
わけあって、
その頃から義靖は土方の家に居候していた。
そのせいか、副長と隊士という役職の離れた彼らは、今でも兄弟のように仲が良い。
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