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「ハル、お前彼女いるんだから彼女と飯行ったらいいんじゃないの?」
「今喧嘩中」
最寄りの駅に向かって歩きながら問うと、彼は眠そうな目をこすりながら言った。起き掛けの彼にとってはこの昼間の日差しは眩しいのだろう。
「それよりもヒロが何とかした方がいいと思うよ、俺は」
「何とか、ってなんだよ」
「早く彼女作れって。あの子はあいつと仲良しカップル。真尋君はそこから略奪するような勇気や力はない。優しさの塊のような人間だもんな」
返す言葉が見つからなかった。
僕はこの大学に入ってからずっと彼女に恋をしていた。
彼氏ができて、どんどん綺麗になっていく彼女のこともぼんやり見ていた。
綺麗になっていく彼女を、どんどん好きになっている自分がそこにはいた。
彼女には「彼氏」がいるのに。
いわゆる「草食系男子」という謂れなのだろうか。
強奪するなんてそれは彼女の為に良くない、そう言い聞かせて過ごしている。
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