三回目の春

3/35
前へ
/37ページ
次へ
「ハル、お前彼女いるんだから彼女と飯行ったらいいんじゃないの?」 「今喧嘩中」 最寄りの駅に向かって歩きながら問うと、彼は眠そうな目をこすりながら言った。起き掛けの彼にとってはこの昼間の日差しは眩しいのだろう。 「それよりもヒロが何とかした方がいいと思うよ、俺は」 「何とか、ってなんだよ」 「早く彼女作れって。あの子はあいつと仲良しカップル。真尋君はそこから略奪するような勇気や力はない。優しさの塊のような人間だもんな」 返す言葉が見つからなかった。 僕はこの大学に入ってからずっと彼女に恋をしていた。 彼氏ができて、どんどん綺麗になっていく彼女のこともぼんやり見ていた。 綺麗になっていく彼女を、どんどん好きになっている自分がそこにはいた。 彼女には「彼氏」がいるのに。 いわゆる「草食系男子」という謂れなのだろうか。 強奪するなんてそれは彼女の為に良くない、そう言い聞かせて過ごしている。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加