アイロン

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目を覚ますと自分のベッドの中だった。 室内は暗く、カーテンの向こうが夜だとわかる。 でも、それが今日なのか、明日なのかはわからなかった。 たくさん眠った気もするし、ほんの少しうたた寝をしただけのような気もする。 いつも見ている夢だって、見たような、見ていないような、それさえわからなかった。 ぼんやりと、さみしかったことだけは覚えている。 今、何時だろう? 時計を見ようにも暗くてよく見えない。 何度か瞬きをしているうちに、ようやくこの暗さにも目がなれてきて、今、2時だということがわかった。 こんな時間に起きるなんてめずらしい。 めずらしいどころか、たぶん、あたし史上、初めてだと思う。 不思議に思いながらも、もう一度眠ろうと思っても目が冴えてしまったのかなかなか寝付けなかった。 ごろんごろんと寝返りを繰り返しているうちに喉が渇いていることに気づいた。 たぶん、たくさん泣いたからだ。 サクに置いてけぼりにされて、あたしは泣いた。 自分の中にこんなにも水分があるんだとびっくりするくらい涙が出たんだった。 それから、サクの背中で眠ってしまったことを思い出す。 裸足で走って、泣きつかれて、サクの背中があんまりにも居心地よくて、それで眠ってしまったんだ、あたし。 喉が渇いたと自覚した途端、さらに喉がカラカラに感じた。 何か飲もうと思い、部屋を出る。 廊下も階段も電気がついていた。 こんな時間に起きたことがないので、それがいつものことなのかどうかわからない。 オバケの足音を聞きながら、そろるおそる1階へ降りて行くとリビングにも電気がついていた。 誰かまだ起きているのだろうか? ゆっくりとドアを開けると、三太さんがアイロンがけをしていた。
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