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「三太さん?」
声を掛けると、三太さんは「うわっ」と大きな声で驚いた。
驚いた拍子にアイロンが倒れて、プシューっと蒸気を上げる。
三太さんはそれにも驚いて「うわっ」と声を上げた。
「大丈夫?」
「花、ど、どうしたんだ?! こんな時間に!」
三太さんは声がひっくり返ってしまうほどびっくりしたのか動揺していた。
「ごめんね。驚かせちゃって。もしかしてオバケかと思った?」
「ちょっとだけ思った。でも、まさか花がこんな時間に起きてくるなんて夢にも思わなかったからホントにびっくりした」
「うん。あたしもこんな時間に起きちゃった自分に自分で一番びっくりしてる」
「びっくりして眠れなくなった?」
「うん。ちょっと。でも、それより喉が渇いちゃって」
「そっか。今日は飲まず食わずで寝ちゃったからなー。おなかは? 減ってない?」
「うん。減ってない」
「今日はケチャップたっぷりのナポリタンだったのになー」
「えー、なんで起こしてくれなかったのー? 三太さんのナポリタン食べたかったなー」
「起こしても起きなかったくせに」
「ホントにちゃんと起こしてくれた?」
「起こしたよ。サクが鼻をつまんでも美月がこちょこちょしても全然起きなかった」
「美月さん帰ってるの?」
「うん。花がいない夕食は静かでさみしいって言ってた」
「あーあ。あたしもみんなと一緒にナポリタン食べたかったなー」
「残念ながら花の分はサクが全部食べちゃったけどね」
三太さんはおしゃべりをしながらでも手際よく器用にアイロンをかけていく。
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