アイロン

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ふと、サクの背中を思い出す。 「サクには何があったんだろう?」 「え?」 「今日ね、サクの背中が放電してたの」 「放電って、ナマズじゃないんだから」 「うん。それ、サクにも言われた。でもね、ホントにそう見えたの。何かに怒ってるみたいにピリピリしてた。それに・・・」 「それに?」 「バスの中で三角の目してた」 「三角の目?」 「ほら、目を三角にするって言うでしょ?」 あたしは目尻を人さし指で吊り上げる。 「こんな目して、すごく不機嫌だった」 あのとき、サクの目だけじゃなくて全部が不機嫌だった。 「花のこと忘れて置いてけぼりにしちゃうくらい?」 「サクに聞いたの?」 「まぁね」 「それ言ったらまた泣くって言ったのに」 「ごめんごめん。泣くならもう言わないけど」 「ウソ。もう泣かないよ。サクの背中にくっついてたら、かなしいとかさみしいとかそういうの全部どこかに行っちゃった」 「そっか。そりゃー良かった」 「でも、サクの不機嫌はどこに行ったのかはわかんないままだった。聞いても教えてくれなかったし・・・サク、三太さんには喋った?」 「うん。聞いた。ちゃんと話してくれたよ」 「え? 三太さんには話したの?」 あたしには教えてくれなかったのに。 サク、三太さんには言うんだ・・・
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