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「花、風呂入ってくれば? 髪の毛ボサボサだし」
「三太さんがボサボサにしたくせに」
「それに、今日泣いたからかな? 目が赤いし、瞼もちょっと腫れてる」
「ウソ」
「鏡、見てごらん」
あたしは鏡ではなく、ガラスのテーブルに映る自分の顔を見る。
「ホントだ。ひどい顔」
「明日の朝、そんな顔見せたら朔も美月も心配しちゃうから」
「サクには心配じゃなくてブサイクって言われる気がする」
三太さんは「確かに。なんせ朔はデリカシーがないからなー」と言ってアハハと笑う。
「そんなに笑わなくてもいーのに。どーせ、ブサイクですよーだ」
「ウソウソ。うちの可愛いお姫様にそんなこと言うやつは俺がやっつけてやる」
「やっつけなくていいよ」
「どうして?」
「三太さんが言ったんでしょ。サクは誰よりも優しいって」
「うん。言った」
「でも、だからかな? サクに心配されると、あたし、どうしていいかわかんなくなるんだ。だから、ブサイクとか、バーカって、いつも通り言ってもらってた方が元気になる気がする」
「じゃあ、俺は? どうしたら花が元気になれる?」
「三太さんには今みたいに笑っててほしい。それから、美月さんには・・・」
「美月には?」
「ぎゅってして、頭のてっぺんにチューしてもらえるだけでいい」
「やっぱ美月には敵わないなー」
「どうして? あたしにとっては三太さんもサクも美月さんと同じくらい最強だよ。ホントはね、何も言わなくても、何もしなくても、3人がただそばにいてくれるだけで、それだけでいいんだー。それだけであたしは幸せなんだー」
三太さんは何も言わず、あたしの頭をまたわしゃわしゃとかき混ぜるように撫でた。
それはいつもの三太さんと少し違って見えた。
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