ひとつだけ

2/2
前へ
/861ページ
次へ
体も頭も疲れているのに、全然眠れなかった。 どんなに目を閉じても、浮かんでくる。 その感触も、温度も、匂いも。 まとわりついて離れない。 ベッドの端に座ってぼんやり窓の外を見る。 煌々と夜を照らす月。 ヘッドフォンから聴こえてくるのは優しい歌声。 花が好きな矢野顕子。 彼女の歌はまるで絵本のようだと花は言った。 『ひとつだけ』 それはあの人が一番好きだった歌。 午前2時。 たったひとつの点になる瞬間。
/861ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加