小さな手

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「どうしてワンピースなんか着てるの?」 黒いワンピースのせいか、それはキイロを彷彿とさせた。 「どうしてって・・・何かおかしい?」 サクは不服そうにあたしを見つめる。 「だって、男の子なのに」 「何言ってるの? あたしは最初から女の子だったよ」 あたしが男の子だったら良かったのに。 そう思ったことは何度もある。 そしてそれはサクが女の子なら良かったのにと思うことと同じだった。 それは1回だけじゃない。 何度も何度も。 あたしがそれを望みすぎたせいだろうか? 「ほら、あたしたちそっくりでしょ?」と、サクが笑う。 あたしたちが、小さい頃からみんなに「似てるねー」って、「どっちがどっちかわからないね」って言われるくらいの双子だったら何か違ったんだろうか? でも、そんなことを望んでも何も変わらない。 サクはサクでしかない。 あたしはその小さな手を握り返す。 「男の子だけど似合ってるよ。そのワンピース」 「だから、最初から女の子だって言ってるでしょ」 サクは不服そうにほっぺたを膨らませた。 不機嫌そうだったけど、それはそれはとても可愛い女の子だった。
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