ラブレター

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「そういえば、花は?」 わかりきったことを聞くと、涼子は「そんなの図書館に決まってるじゃない」と律儀に答えてくれた。 「どこかのバカと一緒で一番に教室出てったわ」 「ホント、毎日毎日よく飽きないよなぁ」 「今日は新刊が入ってくるとかで張り切ってた」 そういえば今朝そんなことを言っていた気がする。 「何がそんなにおもしろいんだか」 「ま、本だけが理由じゃないと思うけど」 「どういう意味?」 涼子はもったいぶって「気になる?」と聞いてきた。 「別に」と素っ気なく返す。 「あっそ。だったら教えてあげなーい」 興味がないと言えばウソになるし、興味があるなんて言えば涼子の思うツボだから言いたくない。 「朔も1回図書館に行ってみたら?」 「なんで俺が」 「花が毎日図書館に行きたくなる本当の理由がわかるから」 「別にいいよ、俺は」 涼子は俺の気持ちを見透かすように「ホントは気になるくせに」と言った。 「花だっていつまでも小さな女の子じゃないんだからね」 「どういう意味?」って聞きたかったけど、それはぐっと飲み込んだ。
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