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惚けて固まったままの使えないでくの坊に、八幡は唸るように声をかけた。
初めて見た杏の奇行に、自分も一瞬体が竦んだ。けれど、それもすぐに解け、杏をどうにかしなければと体が勝手に動いた。
しかし、ここにいる奴らはなんなんだろう? 杏が気を失っても、手伝う素振りもない、この土偶のような奴らは。
体の内が燃えるように熱い。久しぶりに感じる堪えようの無い怒気に、杏を支える手が震える。
「お前らさ、あんだけ、色々一緒にやってた杏が、変な行動とったからって、何もできないわけ?おかしいって思ったのか。頭がおかしいって…? お前らだって知ってるだろ…杏ちゃんがどれだけ鞍馬に依存してたかなんて…。いなくなったって聞いたら、どれだけショック受けるかって…わかるだろ!!」
杏を支えたまま、八幡は睨め付けるように周りを見渡す。
「それとも、杏はおかしいからショックなんて受けないとでも思ってたのか。揃いも揃って、どいつも引きまくって、何もしないで……お前ら全員聞いてただろうが!!鞍馬が、俺ら全員の前で…頭下げて、自分がいなくなっても杏ちゃんの事宜しく頼むって…頭下げてんの見てただろうが!!」
鞍馬は自分がいなくなる事を、杏以外の人間には伝えていた。杏がいないときを見計らい、全員に声をかけ、杏が一人で寂しい思いをしないようにしてくれと頭を下げて頼んでいた。
最初にそれを聞いた時は、八幡も惚けた。いなくなるそぶりなど微塵も見せていなかったから、まったく気がつかなかった。なんでいなくなるんだ、と詰っても「お願いします」と頭を下げ続ける鞍馬を見て、鞍馬にはどうしようもできない理由なんだろうと悟った。
所詮自分達は未成年で、親の庇護下に置かれるただのガキ。自分達の自由など、親の手のひらの上にしかない。
「お前ら、言ったよな。安心していい、ちゃんと仲良くするし、面倒も見るからって。笑いながら言ってたよな? 鞍馬はちゃんと言ってただろ。自分がいなくなったと聞いたらパニックになるかもしれない、そうしたら今みたいな行動をとるかもしれないからって…どうしたらいいかも全部言ってたよな?それなのに、なんなんだよ…お前らにはあいつの誠意が全然わからないのかっ、それがわからないくらい馬鹿ばっかなのかよ!」
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