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「もう、そろそろ良いんじゃないかしら?」
何が?なんて聞くのは愚問だった。
もう、随分と前から彼女の目は冷ややかだったし、口振りだって変わったのに気が付いていた‥。
しん、と静まり返ったリビングのテーブルの上‥
一昨年だったか、クリスマスのプレゼントにあげた硝子の万年筆を薄っぺらの紙きれと一緒に並べ重々しい空気を割いたのは、
いつだったか思い出せもしないほど、長く傍に居た妻だった。
「健二さんもこれ以上は、辛いだけでしょ?」
大学の時から付き合い始めた彼女、
社会人になり、お互いが自由のある関係のまま、夫婦になった。
会社帰り、待ち合わせては食事をしたり、
一年に一度、海外に旅行に出掛け‥
そんな日々は長くは続かなかった。
お互いの仕事を尊重しあうが余り、
噛み合わない時間が増え、別々に過ごしていた。
時々、それでも訪れるイベントは一応押さえはしていたものの、このままではいけないんじゃないか?と思い出したのは30を過ぎた頃だった‥
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