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そんな事、言える立場に居ない事すら忘れてしまいそうな程 動揺する
「健二、またゆっくり話でもしない?」
差し出した携帯を見ながら、
汗ばんだ指がピクリと揺れた‥‥
「‥‥それ」
革のカバーの中、まだ新しい機種のスマホにぶら下がった古ぼけたキーホルダー
「あぁ、懐かしい?」
白く細い指がまるで大切な物を扱うみたいにそれを撫でた。
「捨てて無かったんだな‥‥」
キーホルダーと並んだ鍵。
「そうだね‥‥」
昔、昔‥‥
小さな部屋で二人で過ごした過去を、
まるで大切な宝物のようにキュッと握った手を見て‥‥
久しぶりに目頭が熱くなった。
「教えてくれるかな?」
握った鍵を隠すように携帯を差し出したのを見て、ハッとしてポケットから同じように携帯を向けた‥‥
「部長!!!雨ですっ!!!」
並んだ2つの携帯の間を遮った声に引きずり戻され‥‥
「行きましょ!」
その手を掴んだ彼によって、
アキラとの再開は終了を迎えた‥‥
「アキラさん!また!!!」
振り向き、大きく手を振る彼に呆気に取られた俺が思いの外強い力で引っ張られる‥‥
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