ケンジ

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「はぁ‥」 溜め息に混じるのは解放感。 長く続いた生活は意味をもたず、 ただ、事なきを得てきた俺は何も思いもしない‥‥。 テーブルに並んだ過去の遺品を見詰め、それらを集める気も起きずに仕事の鞄からタブレットを取りだし、明日の資料を確認した。 今更、何が出来ると言うのか‥‥。 静かな時間、いつもと同じ‥‥ テレビの音さえしない静寂に、壁に掛かった時計が鳴った。 「はは、‥‥」 37歳の誕生日だった。
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