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「死んでるわけないだろ。」
一瞬絶望を味わったがすぐに掬い上げられた。
「じゃあどういうことよ。」
「さぁ。まぁ、魔力があるかどうかはまだ分からん。」
さっきないって言わなかったか?
「厳密にほんの小さなさくらんぼ並みにはあるかもしれないということだ。」
ほんの数ミリとは言わないんだね、この世界。
「分かったわ。それに期待してみる。」
と言いながら、私は次に親に電話してみた。
私のクラスが授業中だったからあちらの世界も出られないかもしれないけど。
「もしもし、真由?」
繋がった。
少し目がつーんと熱くなる。
朝から会ってるのに、長い間会ってない感覚がする。
これから暫く会えないと思うと、泣けてくる。
今までうっとうしく思っていたけど、やっぱり親は親だ。今まで一緒に過ごしてきた家族だ。
しかも、いきなり会えなくなるなんて。向こうにとっては、神隠しより、誘拐事件の方がしっくり来るのではないだろうか。
「ずずっ。もしもし、お母さん。」
「どうしたのよ。」
私の鼻を啜った声に、少し慌てた様子の母。
私は気を取り直して、話す。今までの事を。
「いきなり変な世界に迷い混んだの。授業中に。今教室でもいきなり消えた私に騒然としてるみたい。」
「そんなの嘘でしょ。」
お母さんは笑いながら言うが、残念。本当の話である。
「嘘じゃないよ。国名ラキソフロリアだって。そっちの世界にないもん。」
「何よその薬みたいな名前。」
ラキソベロンとか何か聞いたことあるね。薬。
「一瞬そう思ったけど、違う。マジ地球じゃないんだって。違う星にとんだみたい。帰り方も分からないから暫く帰れない。」
「じゃあなんで携帯繋がるのよ。」
「それは私もわからない。」
「一週間経って戻ってこれなさそうならこっちで対応するから、携帯繋がるよう節約するのよ。」
…普通なら信じてくれないのに、信じてくれた。
また涙腺弱る。
まぁ、口調軽いけど。
「……ありがと、お母さん。」
「…。」
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