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「本当に帰ってこなくなるみたいな言い種ね。そこはどんな世界なの?」
「剣と魔法の世界。所謂ファンタジー。今も目の前でペガサスやドラゴンが闊歩してる。帰りに写真撮って帰れるようにしとくね。」
「そうしといて。………ってその世界かなり危険じゃないの?」
「うん。多分。周り皆銃当方違犯だよ。」
一瞬時間が止まったように静かになる。
お母さんも漸く現実味を帯びたのかもしれない。ファンタジーの世界だけど。私の話も真剣だから。
「………死なないようにね。」
「うん、絶対死なない。」
この2つの会話で全てが通じた気がした。
この世界の危険さ、帰れない状況、私の心のうち、そしてお母さんの心境。その全てが。
「じゃあ、また。」
沈黙が支配しはじめたので、通話をやめる。
思わず溜め息が出た。
これからは誰も頼れる人は居ないこの世界で生きていかなきゃいけない。
「俺を頼れ。」
「え。」
今まで黙秘していた、ご主人フレイスが真剣な目で此方を見ていた。
その目は蒼く澄んでいる。
「お前は俺の使い魔だ。もう、俺の家族だ。」
普段なら、え、それどこかからパクりました?となる台詞なのだが、今はただガツンと来た。
響いた。心に。
胸が熱い。瞼も熱い。
私はついに涙腺崩壊してしまったようだ。
「…………うん。」
ぽてりと力なくフレイスに凭れる。
フレイスは私の後頭部に手を回し、しっかりと抱き止めてくれた。
今日会ったばかりだが、安心した。ホッと心が安らぐ。
初めて会ったときも、惹き付けられるようになったが、今は少し違う。
いつもならプライド的にこんな風に寄り添いたくないが、今はまだ…。
………今はまだこのまま。
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