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涙も枯れてしまったように、人形のような無表情になって。ただ麻雄に手を引かれるまま、機械的に出雲まで戻ってきたのだと。
その梨花が、ようやく人間らしくなった。
狭霧はそのことに少しだけ安堵して、梨花の背中に腕を回す。
「わかっています」
「独りは、いやだ……怖くて、苦しいから」
「ええ」
抱きしめたまま、嗚咽する梨花の頭を撫でる。
「梨花。ぼくは……あなたになにをしてあげられるでしょう?」
どうすればいいのか、彼女に泣かれるたび、狭霧はわからないで戸惑うばかりだ。だから今日は、どうしてほしいのかを聞く。
彼女は、答えた。
「……て、ほしい……」
涙の混じったその要望に、狭霧は目を見開いた。
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