帰郷

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―――――  死んでしまったのは確実なのに、遺体がないから行方不明。  その悲惨な憂き目に遭った青年から届いた手紙を、まゆらは読み返していた。  特派中国支部長の義娘(むすめ)であるまゆらは、味気ない勉強部屋の机の、引き出しを開けた。  まゆらは、樹海で亡くなったとされている敏秋と、数ヶ月前から狭霧を経由して文通していた。九州支部の家に養子に入ったまゆらの姉雪音(ゆきね)と、敏秋は一時期親しかった。彼女を見送ったのも、敏秋だった。その縁で、まゆらが雪音の妹と知った敏秋はまゆらのことも気にかけるようになった。  気づけば十通ほどの敏秋からの手紙が、まゆらの机に溜まっていた。開け放った窓から十月の夜風が吹き込み、まゆらの長い髪を撫でる。
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