帰郷

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 だからまゆらは久しく、家族以外の誰かに名前を呼ばれたことはなかった。 『伯家まゆらさん』  敏秋の手紙を抱きしめて、まゆらは唇を噛みしめた。  呼んでほしかった。あの声で。  呼んでほしかった。その名前を。  生き別れた姉と同い年だった彼をまゆらは、気づけば兄のように想っていたから。
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