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広大な樹海の中での行方不明者はかなりの数で、置き去りにした敏秋の遺体も見つからず行方不明のままだ。無事回収された梨花の父親の遺体は、先に見つかったほかの中国支部の者たちの遺体とともに、すでに故郷に運ばれている。
それどころか、火葬されている。
しかし病院のベッドから離れられない梨花は、父親の遺体に最後の別れすらいえていないのだ。
彼女が目覚めたらその事実をどう伝えればいいのだろうと、二村麻雄は頭を悩ませた。
中国支部から樹海に足を運んだのは総勢で十四人。そのうち遺体は見つかっていないが梨花の兄敏秋も数に入れて、五人が死亡し、残り全員が負傷した。
動けないほどの負傷者は梨花以外いなかったので、麻雄だけが梨花に付き添って残り、彼は同じ支部から来た者たちに遺体を託して帰らせた。そして昨日、四人の遺体は故郷で荼毘(だび)に伏されたという。
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