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中学生になった春。
──今、思い返してみれば、ここからすべてが狂い始めたように思う。
ごくごく普通の、一般的な生活が送れていると思っていたのに実際はそうではなくて、俺の家庭は世の中の『歪み』を一手に引き受けたような家庭だったということに気づいたのもこの中学生の時期。
そして俺が、『僕』と出会うきっかけができたのもこの時期。
俺の世界が音もなく崩れ去っていったのも、この時期。
…まぁ、世界が崩れたといっても元から崩れていたことに俺自身が気づいていなかっただけだったというのが本当のところな気がするけれど。
そういうことは、今でも考えたくはない。
ここで俺の家族を紹介しよう。
これからの話をするにあたって、家族の情報があったほうがいいだろうから。
父親、八神 義人[やがみ よしと]。
会社勤めの47歳。特に目立った特技もないが、仕事だけはそつなくこなしているらしく高給料。趣味はゴルフ。
母親、八神 由梨絵[やがみ ゆりえ]。
43歳、主婦。節約と料理が大好きで、近所付き合いも悪くない方。趣味はショッピング。
兄、八神 夏灯[やがみ なつひ]。
16歳、高校2年生。勉強はそれなりにできるいわゆる優等生。高校に入って少しガラが悪くなった(ような気がする)。
俺、八神 朔[やがみ さく]。
13歳、中学1年生。
どこにでもある、一般家庭。
そう思われているし、俺自身もそう思ってた。あの日までは──
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