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俺は〔広い〕浴室にいた。
もちろん、自宅のアパートではない。
男女が一夜の交わりを楽しむホテル。
一緒に浸かっているのは一回り以上も年下の同僚。
由奈がどういうつもりで誘ったのかは俺の頭では理解不能なわけだが、ハッキリしているのは俺は酔っておらず、由奈は酔っている〔ように〕見える。
☆☆☆☆☆
誘ったのは俺じゃない。
由奈が二次会の帰りに俺が乗ったタクシーに無理矢理乗り込んだ上、運転手に「ホテルAIにお願い」と勝手に行き先を告げたのだ。
その時点で反論しなかった俺の態度に問題があると言われれば何も言い返せない。
「長岡さん、カラオケに行くんですよ。だって、今の時間じゃ~カラオケボックスは満員で歌えないですよ。だから、ホテルのカラオケで歌いましょ」
ホテルのカラオケ?
訝しげな表情を浮かべた俺に「えっ?長岡さん〔知らない〕んですか。今は〔常識〕ですよ」
【知らない】【常識】
この言葉は俺にとって重みがある。
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