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【プライド】
俺の唯一の欠点と言ってもいいくらいプライドが高い。いや、高いのではなく、無知だと思われるのが嫌なのだ。
特に年下の女性が驚いた顔で「知らないんですか」と聞かれることは許せない。
芸能やファッションならば世代の違いで笑ってすまされる。
だが、今回は笑ってすまされる問題ではなかった。
なかった?
本当にそうなのか?
ホテルにカラオケがあることを知らなくても恥ずかしいことではない。
「長岡さん、聞いてます?」
由奈の声に我にかえる。
「もちろん知ってるけど、今の時間は満員じゃないの?」
俺は冷静さを装い答えた。
「大丈夫。AIなら空いてるはずですよ」
そう言って由奈は俺の肩にもたれかかった。
「そうか。それならいいか」
俺の左肩から由奈の髪の毛の甘い匂いが漂う。
半年後には45歳の誕生日をむかえる俺と昨日誕生日だった22歳の由奈。
「長岡さ~~~~ん」
肩にもたれかかったまま由奈は甘えた声を出す。
そんな俺達をタクシー運転手はバックミラー越しにチラチラと見ていることに気づく。
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