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「さっ、長岡さん。歌いましょう」
由奈はカラオケの本を取り出すと俺に手渡した。
「俺さ、最近の曲は知らないんだよな」
流行に乗る年齢でもない。知っているのは自分が由奈の年齢の頃の曲ばかりだ。
「別に盛り上がればいいじゃないですか。先に歌ってください。長岡さんって歌うまそうだし」
「そうでもないよ」
そう答えつつ、内心はドキドキしていた。
ここでも俺のプライドがもたげる。
無難かつ、由奈にひかれない歌。
「そうだな、何を歌おうか」
悩むふりをしながら本のページをめくる。
「長岡さん、ちょっと手洗いに」
由奈は本を置き手洗いに消えた。
由奈の背中を見た後、部屋の中を見渡す。
どう見てもホテルである。
そして、一緒にいるのは会社の同僚でもある由奈。
「カラオケね」
ベッドを見ながら呟く自分に思わず苦笑いを浮かべる。
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