施設side - 希望と現実

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ーー目が覚めると、頬に冷たい感触があるのがわかった。 聞こえるのはうめき声。というよりは、吐息に混じって小さく声が漏れている感じか。 状況を把握するため、身体を動かす。 "カラカラ"という音が空間に反響した。 「なん……!」 手が重く、動かしにくい。そして驚愕した。よく見ると、両手に真っ黒い腕輪のようなものが着けられ……左右のそれを鎖で結んでいる。 さっきの"カラカラ"という音はこれか。光沢は金属っぽい独特のツヤ。 それだけじゃなく、重たい。手の自由をある程度奪うだけではなく、この重みによって動かすことすら抑制される。 簡単に言うならば手枷。こんな言い方はしたくはないが、いつかの時代の奴隷のようだ。 首と繋がれていないだけマシか。足には異常がないようだ。 俺の今の状態はこんなところか。 この状況にも驚きだが、こんな状況に置かれてもパニックにならない自分にも驚いている。 正直なところ、何故こんなことになっているのか、記憶を辿ればわかってくるんじゃないかと思っていた。 それより、さっきから聞こえるうめき声はなんだろう? 話しかければ答えてもらえるだろうか。記憶を辿るより先に、声の主にアプローチを仕掛けた。
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