施設side - 希望と現実

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しばらくして、服の擦れる音。相手も身をよじって移動しているのだろう。 廊下を挟んで向かい側も格子の部屋らしい。当たり前というかなんというか。 声の主が姿を現す。わずかな光に照らされたのは手と曲げられた膝。 手は赤い。切り傷と出血痕か。膝の頭にも赤い染みが出来ていた。 正直、身震いした。俺も同じ場所にいるということは、同じ状況に陥るということ。 何かの拷問にかけられるのだろう。 「まな……と……」 名前を呼ばれて、身震いを通り越してゾッとした。 確かに俺は『千岡愛斗(ちおかまなと)』だ。しかしゾッとしたのはそこじゃない。 声は掠れているが、その声にわずかな聞き覚えがあったからだ。約2ヶ月前、数日間だけ……ここの前の監査施設で一緒に暮らした友達、いや仲間が傷だらけで、血だらけでいることに大きな悪寒を誘われている。 「あんまり喋るな」 あまりにも苦しそうだった。苦しそうだったから、なるべく喋らないように釘を刺した。 もしかしたら俺が思っている以上にここは危ない場所なのかもしれない。
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