施設side - 希望と現実

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増して、あの人は監査施設に入らず、6年間も隠れ続けた。 17歳になって監査を拒めば強制的に施設に入れられる。それでも拒めば刑務所行きだ。それくらいはテレビや授業で情報を得ている。 更に、『ブラック』というものがついて、買い物やサービス機関の利用ができなくなる。 17歳以上だと、どこに行っても認可証の提示を強要される。認可証は監査施設から出た時点で発行されるんだ。 この通り、俺も今は認可証を持っていない。 警察のお墨付きをもらっているから捕まることはないが……自分だけで買い物はできない。 次の施設も、聴取が済むまで見送りとされていた。 ……本題に戻る。 果たして、捕まれば刑務所行きの彼の名前を教えてもいいのだろうか? 考える暇はなかった。俺は答えるしかない。 答えない理由もなければ、それらしい嘘も見当たらない。 後ろには母がいる。心を読まれて嘘を見抜かれたら面倒だ。 「川音大吉です。他に施設に居た人の名前も教えましょうか」 「是非教えて頂こうか」 興味深げな表情でそう言った鈴羽さん。据えた目はこちらを捉えて離さない。 威圧を与えるつもりはないだろうけど、嫌でもひしひしと伝わっていた。
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